ジャマイカ学

by ジャマイカの風

Takahiro  Sawada

澤田高宏

Culture & History

ニックネームと郵便事情

  • 便利な移動手段を持っていれば、行動範囲が広がる。 小学校の時に自転車を買ってもらってからいろんなところに自分で行くようになり、原付バイクに乗るようになれば隣の市に行けるように、車では隣の県や遠い観光地まで行くようになる。 大学生になれば海外旅行に行くこともあるだろう。 社会人になればビジネスでいろんな国に出張する機会も増えるだろう。

 

  • 外に出ずにコミュニティーの中で一生を終える人もいるだろう。 ジャマイカでは一生本名を知ってもらえずに過ごす人も多い。 子どものころから ”シャニー” と呼ばれている子は母親しか本名を知らない。 6歳くらいになると ”ダニエル” という本名を教えてもらえるのだろう。 しかし、その近所では、一生 ″シャニー” である。 悪いことをして新聞に載ると本名が明らかになるのであるが、テロリストになってどこかを爆破するか、連続殺人鬼くらいでないと新聞沙汰にはならないので、本名が知れ渡ることはない。 

 

  • 郵便物が届いたって、”ダニエル・スミス” という人物は誰も知らない。 外壁に表札があるのは日本だけ。 ジャマイカでは番地の番号すらわからない家が多い。 ”トロピカル通り10番、キングストン2” がどこかわからないので、郵便物はその辺りに放置されるか、管轄の郵便局で保管され、5年経つと捨てられる。 近所の30人に尋ねてもダニエル・スミスという人物はその辺には存在しないから。 封筒を透かして見るとクーポン券みたいだぞ、ということになると、その30人全員がダニエル・スミスに成るか、届けといてあげるよって具合である。

 

  • さすがに社会人にもなると、納税者番号取得、ID取得のために、本名で申請しなければならない。 たまにアホがいて雇用に必要な履歴書に本名を書かないもんだから、給料を小切手でもらった場合に現金化できないのである。

従業員 : 「だんな、小切手の名前が違っていたんで現金化できませんでした。 差し替えてもらえますかいの。」

雇用主 : 『OK,その古い小切手持ってきな。』

従業員 : 「銀行に預けました。」

雇 : 『銀行に預ける理由もないし、本名と違うので銀行は預からないよ。 おおかたどこかでエンドースメントして現金化済みなんだろう。 この明細見てみな。 もうすでに会社の口座から引き落とされるんだよ。 ナイストライじゃの。 今日はもう帰りな。 明日も来なくていいよ。』

従 : 「それはクビということですかいの。 2週間のNOTICEが無いんで2週間分の給料もらいまっせ。」

雇 : 『そんな知識だけは持ってるんやね。 あんたの場合はまだ試用期間5日だから、権利も義務も無いんだよ。 とっとと帰りな。』

従 : 「次の職を探すためのバス代くれ。」

雇 : 『それもナイストライじゃの。 そのくらいで止めておきな。』